「教員を辞めたい。でも、家族が反対しそうで言い出せない」
そう思って動けずにいる人は、多いと思います。
先に、正直なことを書いておきます。
私は、家族に反対されませんでした。
でもそれは、運がよかったからではありません。話し方を変えて、半年かけたからだと思っています。
何をどう話したのか、順番に書いていきます。
きっかけは「やつれたね」と言われたことでした
私が本格的に動き始めたのは、育休から復帰したあとでした。
4月に職場に戻って、5月には、いろんな人に言われるようになりました。
「やつれたね」
一人や二人ではありません。会う人、会う人に言われました。
自分では気づいていませんでした。でも、まわりから見たら、そのくらい分かりやすく消耗していたということです。
体は正直だな、と思います。
最初に話したのは、お金のことでした
家族と話すとき、私が最初に持ち出したのはお金の話でした。
気持ちの話ではありません。数字の話から始めました。
これができたのには理由があります。育休のあいだに、家計管理を進めていたからです。
収入がいくらで、支出がいくらで、何にどれだけかかっているのか。それがすでに見える状態になっていました。
だから、こう言えたんです。
「私の収入がなくなっても、今の家計ならやっていける」
これが「たぶん大丈夫だと思う」だったら、話はまとまらなかったと思います。
家族が反対するとき、その理由の多くはお金の不安です。そして不安は「わからない」から生まれます。
数字を出せば、わからないが減ります。
※家計の状況はご家庭によって大きく変わります。判断に迷う場合は、お住まいの自治体の窓口や専門家に相談してください。
説得ではなく、一緒にシミュレーションしました
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
私は、パートナーを説得しようとはしませんでした。
話し合いの中身は、こういうものでした。
- どんな辞め方がいいだろう
- 辞めたら、暮らしはこんな風になるよね
- そのとき、これはどうする?
つまり、「辞めるか、辞めないか」を議論したのではなく、「辞めたあとの絵」を一緒に描いていたんです。
半年かけて、その絵の精度を少しずつ上げていきました。
なぜ「説得」ではうまくいかないのか
説得しようとすると、話す人と、説得される人に分かれてしまいます。
そうなると、相手の役割は「検討する側」ではなく「判断する側」になります。判断する立場に立たされた人は、慎重になります。慎重になれば、反対に傾きます。
でも、一緒に絵を描いているときは、二人とも同じ側にいます。
「そこはどうする?」「これはこうしよう」と、二人で穴を埋めていく作業になる。反対も賛成もありません。精度が上がっていくだけです。
私の場合、パートナーがもともと前向きな人で、同じ方向を向いてくれていたことも大きかったと思います。それでも、やり方として「説得しない」を選んだのは正解だったと感じています。
二人が共有していた危機感
もうひとつ、大きかったことがあります。
私たちは、同じ不安を持っていました。
「このままバタバタしたまま日々が過ぎていって、後悔するんじゃないか」
これを、お互いに思っていたんです。
私だけが「辞めたい」と言っていたなら、対立になっていたと思います。でも、二人とも同じ景色を見ていた。だから、話が早かった。
もし家族に反対されているなら、この「共通の危機感」があるかどうかを確かめてみるといいかもしれません。
「私がつらい」ではなく、「このままだと、私たちはどうなると思う?」と聞いてみる。相手の中にも同じ不安があるなら、そこから話が変わります。
親に伝えたのは、決めたあとでした
親には、いつ言ったか。
校長に退職を伝えたあとでした。つまり、もう決まってからです。
相談ではなく、報告でした。
これは意識してそうしたというより、結果的にそうなりました。でも、今振り返ると、これでよかったと思っています。
母の反応
母は、私がやつれているのを見ていました。子育ての大変さも分かってくれていました。
だから、こう言ってくれました。
「他の道もあるよね」
反対はありませんでした。普段の私を見ていた人だったからだと思います。
父の反応
父は、心配してくれました。心配の中身は、はっきりしていました。
「住宅ローンがあるけど、大丈夫か?」
これに対しては、答えられました。家計管理をしていたので、数字で「大丈夫」と伝えられたからです。
心配の中身は、人によって違う
母と父では、心配していたことがまったく違いました。
| 心配していたこと | 効いた答え | |
| 母 | 私の状態、子育てとの両立 | 普段の姿を見てくれていた |
| 父 | お金(住宅ローン) | 数字で示した |
反対されたとき、大事なのは「何を心配しているのか」を正確につかむことだと思います。
「反対されている」とひとまとめにすると、答えようがありません。でも「お金が心配」なら数字で答えられる。「体を壊さないか心配」なら、状態を共有すればいい。
相手の不安の中身を聞くところから始める。これが遠回りに見えて、いちばん早いです。
もし、最後まで反対されていたら
正直に書きます。
もし最後まで反対されていたら、私は諦めて、教員を続けていたと思います。
そのあとどうなっていたかは、分かりません。
もっとやつれていたかもしれない。体調を崩していたかもしれない。あるいは、意外と楽しくやれていたかもしれない。それは本当に分かりません。
ただ、ひとつだけ確かなことがあります。
あのとき辞めていなかったら、私は後悔していたと思います。
子どもたちとの貴重な時間を、大切にできなかったこと。自分を大事にできなかったこと。
そして、もうひとつ。これは書くのが少し怖いのですが、正直に書きます。
行動できなかったことを、人のせいにしていたかもしれません。
「家族が反対したから」「あのとき止められたから」。そう言って、自分を守っていたと思うんです。
これは私の性格の話であって、反対されて続けることを選んだ人を責める意味ではまったくありません。続けるという選択にも、同じだけの重さがあります。
ただ、自分のことだけを考えると、私は「人のせいにする自分」になっていた可能性が高い。それが、いま振り返っていちばん怖いことです。
家族に反対されている人へ
最後に、いま反対されている人に向けて書きます。
私からお伝えできるのは、この3つです。
1. 説得しようとしない
「辞めさせてほしい」と迫るのではなく、「辞めたらどうなるか、一緒に考えてほしい」と持ちかける。
相手を判断する側に立たせないこと。同じ側に来てもらうこと。
2. 相手が何を心配しているのか、正確に聞く
「反対されている」で止めない。
お金なのか、世間体なのか、私の将来なのか、家族の生活なのか。中身が分かれば、答え方が決まります。
3. 数字で答えられるものは、数字で答える
お金の心配には、気持ちではなく数字を出す。
「なんとかなる」ではなく、「こうなるから、こうやっていける」まで具体的に。そのためには、先に自分が計算しておく必要があります。
まとめ|半年かけたのは、遠回りではありませんでした
私は、半年かけて話しました。
一度で決めようとしなかったし、説得しようともしませんでした。一緒に絵を描いて、その精度を少しずつ上げていっただけです。
長くかかったように見えますが、これがいちばん早い道だったと思っています。
家族の反対は、あなたを止めるためのものではないことが多いです。心配しているだけです。
その心配の中身を聞いて、ひとつずつ答えていく。それだけで、話は変わっていきます。
急がなくて大丈夫です。半年かけても、そのぶん進めます。


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